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第76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会代表選抜決勝 ▲桑江裕丈七段△禰保拓也七段 観戦記

2022年7月15日

 7月3日に開催した76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会へ来場された島本亮五段に、大会の観戦記を寄稿いただきましたので、以下に掲載いたします。代表選抜決勝→準決勝→準々決勝、S級決勝→準決勝と掲載していく予定です。
 「久しぶりの全クラス開催を予定していたすこやか薬局杯が延期になってしまいましたので、次のリアル大会までの参考になれば」とのことです。

 島本先生、執筆のご協力に感謝申し上げます。


第76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会代表選抜決勝
持ち時間 10分切れたら一手30秒
▲桑江裕丈七段 △禰保拓也七段

初手からの指し手

▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △1四歩 ▲6六歩 △3二飛
▲6八銀 △6二玉 ▲6七銀 △5二金左 ▲7八飛 △3五歩
▲3八銀 △3六歩 ▲同歩 △同飛 ▲7四歩 △同歩
▲同飛 △7三歩 ▲7六飛 △3四飛 ▲3七歩 (第1図)

7月に沖縄かりゆし園で開催された、第76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会の決勝。
▲桑江裕丈さんと△禰保拓也さんの対局です。

桑江さんは過去5回、県アマ名人戦で優勝しており、全国大会ではベスト16の成績も残してい
て、相性の良い大会とお見受けします。

一方の禰保さんは、過去6回の優勝実績があって、全国ベスト8の成績を残されています。今年1月から他大会でも負けなしで、全ての代表権を獲得している、言わずと知れた県を代表する強者。

そんなお二人の戦いは相振り飛車の相三間に。4手目の△1四歩は先手の出方を伺った手で、ダイレクトに▲7八飛なら△8八角成~4五角の変化も一例です。

第1図
第1図▲3七歩まで

第1図からの指し手
△7二銀 ▲4八玉 △7一玉 ▲5八金左 △1五歩 ▲7七角
△2四歩 ▲3九玉 △2五歩 ▲9六歩 △2四飛 ▲6五歩
△7七角成 ▲同桂 △2六歩 ▲4六角 (第 2 図)

 駒組みが続く本譜、桑江さんは「用意の作戦だった」と話します。

 「禰保さんには5連敗中でした。いつもは初手78飛を用いているのですが、少し変えてみました。似た形で過去に菅井ー豊島がありまして、『菅井ノート』でも解説されています」

 ▲3九玉を急がなかったのは△4四角~3三桂の端攻めを警戒したとのことで、1五歩を生かした
その順も有力。△2四歩に3分使っているので、禰保さんも悩んだ様子。△7七角成で早くも秒読み
に。

 ▲4六角は強く反発した手。桑江さんはまだ6分程残していて、自然な▲2六同歩もありましたが、「棋風的に待つよりも積極的に動きたいタイプです。禰保さんとは真逆のタイプです」。

第2図
第2図は▲4六角まで

第2図以下の指し手
△2七歩成 ▲2四角 △2八角 ▲4八玉 △3八と ▲同金
△1九角成 ▲4六角 △4四香 ▲7四歩 △4六香 ▲7三歩成
△同銀 ▲8五桂 △7二歩 ▲7三桂成 △同歩 (第3図)

 よく顔を合わせているだけあって、互いを熟知した上で様々な観点から指し進めている様子が伺えます。それもあって「△2七歩成の踏み込みには驚いた」と桑江さん。
 なお△2五飛として▲2六歩△同飛▲2七歩△4六飛▲同歩△3三角の展開も互角。
 ただ秒読みのなか、自らが動いて、局面が落ち着いてしまう展開は選びにくい。

 ▲4六角では先に▲7四歩もあって△同歩に▲4六角や▲8五桂も有力でした。△4四香が当然とはいえ好手、秒読みでも緩急を織り交ぜた禰保さん、流石の手順です。

第3図
第3図は△7三歩まで

第3図以下の指し手
▲7四歩 △同歩 ▲7三歩 △同桂 ▲4一飛 △6二金寄
▲3一飛成 △2九馬 ▲2一龍 △3八馬 ▲同玉 △3五桂
▲3六銀 △4七香成 ▲同金 △同桂成 ▲同銀 △1二角
▲同龍 △同香 (第4図)

 形だけ見ると、後手陣はバラバラで辛いようにも思いますが、駒の損得もなく互角に近い形勢。桑江さんとしては前譜で角を取られたのが意外と響いています。

 ▲3一飛成で桑江さんも秒読みに。受け一方だった禰保さんにも待望の△2九馬が入って激戦の様相。

 ▲2一竜では▲5一銀と絡んで△5二金寄には▲6二銀打△同金寄▲同銀成△同玉▲2二竜の王手馬取りがありました。

 本譜は△1二角が痛打で後手が優勢になりました。

 いよいよ大詰めです。

第4図
第4図△1二同香まで

第4図以下の指し手
▲9五桂 △7二金寄 ▲8六香 △3五桂 ▲8三桂成 △6九飛
▲7二成桂 △同玉 ▲6四桂 △同歩 ▲8三角 △6二玉
▲6三銀 △同玉 ▲7四角成 △5四玉 ▲6四馬 △4四玉
▲5三馬 △同玉 ▲7三飛成 △4二玉 ▲3四桂 △3三玉
▲4二角 △3四玉 ▲2四金 △4四玉 ▲5三龍 まで。(投了図)

 この辺り、着実に勝利へと歩んでいた禰保さんでしたが、△6九飛の一手が波乱を呼びます。

 △1八飛から詰みを読んでいたそうだが、秒読みの音に慌てて反射的に6九へ打ってしまいました。桑江さんも覚悟を決めていたので、急転に反応できず▲5三馬と負ければ敗着の一手を指します。

 ここは▲5五馬以下で詰みがありました。

 しかし禰保さんも落手から流れに逆らえず△4二玉と逃げて再逆転。△6三歩なら詰まず勝勢でした。

 劇的な幕切れとなりました。
 「ホッとしました」と桑江さん。全国での活躍も期待しています。

投了図
投了図は▲5三竜まで

(島本亮)