第76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会S級決勝 ▲泉佳杜三段△兼城勇吾三段 観戦記

 7月3日に開催した76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会へ来場された島本亮五段に、観戦記を寄稿いただきましたので、以下に掲載いたします。

 島本先生、執筆のご協力に感謝申し上げます。


第76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会S級決勝
持ち時間 各10分切れたら一手30秒
▲泉 佳杜三段
△兼城 勇吾三段

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4四歩
▲4八銀 △3二銀 ▲5六歩 △9四歩 ▲9六歩 △4三銀
▲1六歩 △1四歩 ▲6八玉 △3二金 ▲7八銀 △8四歩
▲7九玉 △8五歩 ▲7七角 △6二銀 ▲5八金右 △4一玉
▲4六歩 △5二金 ▲3六歩 △7四歩 ▲6六歩 △7三銀
▲6七金 △6四銀 ▲8八玉 (第1図)

先手は矢倉も選べましたが、左美濃をチョイスしましたね。
後手は雁木形に。
先手陣は、やや受け身でしょうか。▲4六歩辺りにそんな気がしてしまいます。
悪いということではないですが、消極的な気がするのは昭和の発想でしょうか…。
駒組みを進める先手に対し、後手は攻めの形も作り出します。

第1図は▲8八玉まで。
第1図は▲8八玉まで。

第1図以下の指し手
△5四歩 ▲5七銀 △7三桂 ▲5九角 △8六歩 ▲同歩
△5五歩 ▲同歩 △4五歩 ▲2六角 △8六飛 ▲8七歩
△8一飛 ▲4八飛 △5五銀 ▲5六歩 △4六銀 ▲同銀
△同歩 ▲同飛 (第2図)

△5四歩では、すぐに△7五歩▲同歩△7二飛もありまして、▲6五歩△7五銀▲5五角△6四歩▲同歩△6六歩とします。以下①▲6六同金△同銀▲同角△6五金の変化や②▲5七金△9二飛の変化など、どちらも有力な変化の一つでした。
△7三桂は少し意外な手の感じ。私の感覚が古いのかな…。
▲5五同歩としたところでは▲8七銀とする手もありました。
後手の動きが少し軽い感じがするので、咎めにいってもよかったと思います。
また、▲2六角でも▲4五同歩△5五角(△5五銀には▲5六歩)▲3七桂と迎え撃って▲5六銀からの好形を作るのも有力でした。
▲4八飛でも堂々と▲4五歩と取りたいところです。歩得・位(拠点なみ)など主張点が多い先手ですので、不満はないです。

第2図は▲4六同飛まで。
第2図は▲4六同飛まで。

第2図以下の指し手
△8六歩 ▲同歩 △8五歩 ▲同歩 △8六歩 ▲8四銀
△8五桂 ▲8二歩 △同飛 ▲8三歩 △8一飛 ▲7三銀成
△6五銀 ▲4四歩 △4五歩 ▲同飛 △5四銀上 ▲4九飛
△4五歩 ▲6五歩 (第3図)

△8六歩では△4四歩が無難でした。動いた以上は緩んでいられない!といったところでしょうか。
2度目の△8六歩では△8五同飛もありまして▲8七歩に△2五飛▲2七歩△2四角もありました。飛車が狭いところにいきますが、△5一歩の底歩も利きますし有力でした。
▲8四銀と受け重視に指されましたが▲4四歩もありました。以下△8五飛には▲4三歩成△同金左に▲8七歩と緩め△同歩成▲同銀△8六歩▲同銀△同飛▲8七歩として△8五飛▲4四歩から攻めていく感じです。
歩切れを見てということであれば▲5三銀も有力。
△8一飛に代えて△7二飛でしたら、意外と難しい局面だったようです。
△6五銀は悪手、なにか勘違いをされたのでしょうか?
代えて△3一玉ならまだまだ難しい将棋。
優勢になった先手でしたが、ここから後手の粘りに手を焼きます。

第3図は▲6五歩まで。
第3図は▲6五歩まで。

第3図以下の指し手
△5三金 ▲8二歩成 △4四金  ▲7九玉 △5一飛 ▲7二と
△6五銀 ▲6三成銀 △6六歩 ▲5七金 △5六銀 ▲6六金
△6八歩 ▲同金 △5七銀不成 ▲5二歩 △6六銀成▲5一歩成
△3一玉 ▲4一と △2二玉 ▲6二飛 △8七歩成▲同銀
△6七歩 ▲7八金 △6八金 ▲同金 △同歩成 ▲同玉
△6七金 ▲5九玉 △5七成銀 ▲6九金 △7七桂成▲同桂
△3五金 ▲3九飛 △7七角成 ▲4九玉 △4七成銀▲3五角
△5七桂 ▲同角 △同金 ▲3八飛 △2七角 ▲3九金
△3八成銀 まで。(投了図)

△4四金に対して▲7九玉は中途半端な手。▲5五歩や▲6六銀、切り替えるなら▲8一と△3五金▲6六銀△2六金▲9一と~8一飛で大掃除してしまうのも有力でした。
言い出せばキリがないので、敗着を述べますと、▲3九飛でしょうかね。
▲8六銀と受けていれば…。
その前の▲6九金も怪しいですけどね、強く▲4八飛と指していれば、まだ余せていました。
玉を狭い状態にしたのがまずかったですね。勝勢を意識して安全運転をしすぎましたか。
後手の△3五金は「狙ってました」が炸裂しましたね。ずっとラッシュもなかなかのものでしたけど、先手がどうやってもの域でしたので、これは悔やんでも悔やみきれないといった一局でしょう。

投了図は△3八成銀まで
投了図は△3八成銀まで

(島本亮)