2023年7月2日に開催した大山康晴十五世名人生誕100周年記念第77回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会のD級決勝の棋譜について島本亮五段に解説を寄稿いただきましたので掲載いたします。
島本先生には執筆のご協力に感謝申し上げます。
大山康晴十五世名人生誕100周年記念第77回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会D級決勝
持ち時間 各5分切れたら一手30秒
▲10級櫻井晴崇
△10級大畑光範
初手からの指し手
▲７六歩△３四歩▲２六歩△４四歩▲２五歩△３三角
▲４八銀△３二金▲６八玉△２二銀▲３六歩△５二金
▲３七銀△４三金右▲２六銀△１四歩▲１六歩
（第１図）（手数１７手）
「ウソ矢倉」と呼ばれる出だしの大畑さんに、櫻井くんは棒銀で対抗。
第１図以下の指し手
△４二角▲３五歩△５四歩▲３四歩△同 金▲３五歩
△３三金引▲３八飛△４一玉▲３四歩△４三金寄▲３五銀
△６四角▲４四銀
（第２図）（手数３１手目）
第１図は後手の分岐点で①△８四歩として▲３五歩△同歩▲３八飛に△４五歩とする指し方で以下▲３五銀は△８八角成～５五角で先手が悪いので、代えて▲３三角成に△同銀としておけば、自然と３筋が守れるようになっています。
本譜の△４二角は先に△５四歩とした方が「形を決めない」意味で良いのですが、悪い手ではありません。
進んで▲３四歩に対して△同金が疑問手で△６四角が勝りました。
以下▲１八飛△３四金に▲３五銀のタダ捨て（△同金に▲４四角の狙い）には△２五金で特に問題はありません。
本譜は抑え込みが成功して、▲４四銀が強手。櫻井くんが優勢です。
第２図以下の指し手
△４二金引▲３七桂△３六歩▲４五桂△１九角成▲３六飛
△４三香▲５三銀成△４五香▲４二成銀△同 金▲２二角成
△４七香成▲２一馬△４八歩▲３三歩成△１八馬▲４二と
△同 飛（第３図）（手数50手目）
第２図で①△１九角成は▲４三銀成△同金▲２二角成△同金▲３三金以下で後手潰れ。②△３七歩は▲同桂なら△３四金ですが、▲３七同飛△同角成▲同桂で飛車一枚では先手陣を攻略できませんし、歩切れも痛く先手良し。
本譜の▲３七桂はすごい手で、代えて▲３三歩成も有力ですし、受けるなら▲４六歩もあって（△同角は▲４三歩）△４三歩▲３五銀で満足です。
△３六歩では△４三歩の辛抱や、△１九角成に代えて△３七歩成もあって以下▲３九飛で後手は良くなる変化ではありませんが、まだ長かったように思います。
△４三香に対して▲５三銀成は悪手で▲３三歩成なら先手勝勢でした。
△４五香が冷静に対処した好手でしたが、次の▲４二成銀に△同金が悪手で、代えて△同玉なら混戦だったと思います。
第３図以下の指し手
▲３一飛成△５二玉▲６一銀△５三玉▲５一竜△４四玉
▲４二竜△３五玉▲５四馬△２六玉▲１八馬△２七銀
▲１七角△３七玉▲２八金△同 銀成▲３六飛まで （投了図）６７手にて櫻井くんの勝ち
一目で詰ました貴方は有段者！？とは言いませんが▲６一銀では▲４二竜△同玉▲４三金以下の並べ詰みでした。
▲５四馬はタダでしたが、形勢に影響するミスではなく、最後は▲２八金の捨て駒から▲３六飛ときれいに詰ましました。
第１図以下の数手が後手の未来を左右するといってもいいぐらい大事なところだと思います。手だけをいえば△４一玉も急ぎではないですし、先手に劣らないぐらいの攻撃態勢を整える必要があったように思います。
（島本亮）