第76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会代表選抜準々決勝(3) ▲禰保拓也七段△吉谷新四段 観戦記

2022年7月27日

 7月3日に開催した76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会へ来場された島本亮五段に、観戦記を寄稿いただきましたので、以下に掲載いたします。

 島本先生、執筆のご協力に感謝申し上げます。


第76回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会代表選抜準々決勝(3)
持ち時間 各10分切れたら一手30秒
先手:禰保 拓也
後手:吉谷 新

初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △3二飛 ▲7八銀 △6二玉
▲6七銀 △7二銀 ▲7七角 △7一玉 ▲8八飛 △3五歩
▲3八銀 △3六歩 ▲同歩 △同飛 ▲5八金左 △5二金左
▲4八玉 △1四歩 ▲3七銀 △3二飛 ▲4六歩 △4二銀
▲4七金 △4四歩 ▲8六歩 △4三銀 ▲8五歩 (第1図)

相振り飛車の▲向飛車vs△三間飛車の戦いに。

△1四歩を見て緩いと判断しての▲3七銀なのか、当初の予定なのかは判らない。
互角の範囲ではありますが、最近では珍しい先手の矢倉囲い。

△3二飛では△3四飛から本譜の手順で△6四歩からの菅井流が、ある時期に流行した指し方。今は対策もいくつかあって、以前ほどの破壊力ではなかったかと。

第1図、ここは後手の一つの分岐点。

第1図は▲8五歩まで

第1図以下の指し手
△5四銀 ▲5六銀 △4二飛 ▲8四歩 △同歩 ▲同飛
△8三歩 ▲8五飛 △3三角 ▲3八金 △6四歩 ▲3九玉
△9四歩 ▲2八玉 △7四歩 ▲3四歩 △2四角 ▲8八飛
△4三銀 ▲6五歩 △3四銀 ▲6四歩 (第2図)

△5四銀では△3四銀もあって、どこかで歩を入手、持ち駒が二歩になった時に△3六歩▲同銀△3五歩のような筋も生まれる。なので先手も▲3六歩と受ければ手堅いが、持ち歩が無くなるので悩ましいところ。
ただし▲8四歩△同歩▲同飛の局面では▲8三歩や▲8二歩が厳しくうまくいかない。(一例としては△1五歩▲同歩△同香のような歩の入手)

▲8五飛は後手からの仕掛けを封じた手。

△9四歩から後手は駒組みを重視したようですが、あまり堅くもならないので、仕掛けるのはどうでしたか。一例ですが△4五歩▲同歩として、△7七角成▲同桂△6六角▲8七飛△3三桂の要領で。

▲8八飛は当たりを避けた手でしょうか。

△4三銀は少し怖い感じがします、いかにも▲6五歩と突かれそうですので。
3四歩の利かされは辛いですが、辛抱の時期と割り切って△8二玉や△6三金など、どうせなら△4三金でしたか。厚み負けしないようにしたい気がします。

本譜は▲6四歩の取り込みが大きい。

第2図は▲6四歩まで

第2図以下の指し手
△3三桂 ▲3五歩 △同角 ▲3六銀 △2四角 ▲3五歩
△4三銀 ▲6五銀 △4五歩 ▲同歩 △7三桂 ▲7四銀
△5四銀 ▲3四歩 △4五桂 ▲3三歩成 △4六歩 ▲4八金引
△3七歩 ▲同桂 △4七歩成 ▲同銀 △3七桂成 ▲同金直
△4七飛成 ▲同金上 △4五桂 ▲4一飛 △5一金引 (第3図)

△3三桂に対する▲3五歩はこの形ではよくある手筋。「大駒は近づけて受けよ」の一つ。
△4三銀では辛いので①△3五同銀と取りたいが▲同銀△同角▲6三銀ぐらいでもダメ。後手は△4五歩が突けないので攻めにならない。勝負手で②△3五同角もあるけれど、▲同銀△同銀▲3四角ぐらいでダメ。

先手の攻めを呼び込んで勝負に出た後手でしたが、辛そうな展開。
目一杯の攻めを指していますが、△5一金引ではやはりキツイ。

第3図は△5一金引まで

第3図は△5一金引まで。

第3図以下の指し手
▲4四飛成 △4六歩 ▲4八金 △3七桂成 ▲同金 △3五銀
▲5三龍 △3六歩 ▲3八金 △3七金 ▲同金 △同歩成
▲同玉 △1五角 ▲2六桂 △4七金 ▲2八玉 △2六銀
▲同歩 △同角 ▲8二銀 △同玉 ▲7三龍 △同銀
▲8三飛成 △7一玉 ▲7三龍 △7二金 ▲8二金 まで。

参考までにですが、第3図では▲6三桂もあって△同銀引▲同歩成△4一金▲8二銀
△同玉▲8三飛成△同銀(△7一玉▲7二と以下)▲7三と 以下の詰み。
本譜は手堅い指し回し。30秒と短い秒読みなので万全を期しているのかと。
最後は鮮やかな寄せ。

投了図は▲8二金まで

(島本亮)