大山康晴十五世名人生誕100周年記念第77回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会S級決勝 ▲三段渡慶次勇太-△三段玉城一志 解説

2023年10月12日

 2023年7月2日に開催した大山康晴十五世名人生誕100周年記念第77回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会のS級決勝の棋譜について島本亮五段に解説を寄稿いただきましたので掲載いたします。

 島本先生には執筆のご協力に感謝申し上げます。


大山康晴十五世名人生誕100周年記念第77回全日本アマチュア将棋名人戦沖縄県大会S級決勝
持ち時間 各5分切れたら一手30秒
▲三段 渡慶次勇太
△三段 玉城一志

初手からの指し手

▲7六歩△8四歩▲2六歩△3四歩▲2五歩△8八角成
▲同 銀△2二銀▲7七銀△3三銀▲4八銀△6二銀
▲4六歩△3二金▲3六歩△7四歩▲3七桂△5二金
▲4七銀△8五歩▲7八金△6四歩▲4八金△6三銀
▲2九飛△7三桂▲6八玉△8一飛▲5六銀△6二玉
▲4五歩△5四歩▲6六歩△9四歩▲9六歩△7二玉
▲4六角△6二金▲5八玉△4一飛(第1図)(手数40手)

一手損角換わりです。

先手は早繰り銀に出ることが多く、腰掛け銀は少ない印象です(悪いとは言ってない)。

後手の右玉は今、流行しつつあるようですね(流行している?)。

稽古先で「右玉が主流になりつつあるらしいね」と言われたのですが、元々ありましたよね?

待ちの姿勢が多く「消極的」との有難いお言葉を頂いて、指せない環境だったような…。

ところでソフトを動かしていると36手目の▲4六角では▲9七桂が出てきます。

▲8九飛~8六歩を示していて、凡人の私は▲7九玉しか浮かばないので対照的。

そういえば、この桂跳ね、どこかで目にしたなと思うこの頃です。

△9五歩▲同歩△同香の桂頭攻めがイヤに思う?以下▲9三歩△9一飛(一例)▲9四角△8二玉▲8五桂△同桂▲8六銀で勝勢と。まぁ参考までに。

第1図は△4一飛まで

第1図からの指し手

▲6九飛△4四歩▲同 歩△同 銀▲4五歩△5三銀
▲2四歩△同 歩▲同 角△3三桂▲2九飛△2三歩
▲1五角△1四歩▲2六角△5五歩▲同 銀△4五桂
▲4四歩△3七桂成▲同 金△5四歩▲4六銀△4四銀
(第2図)(手数64手)

専門知識は微量の私ですが、指し手の違和感は感じます。

▲6九飛がその一つで、回る必要があるのかどうか。

意地でも6筋をと言うのであれば▲6五歩として①△同歩なら▲8六歩で一歩を入手して▲6四歩を狙いにいき、②△同桂なら▲6六銀△4四歩▲6九飛などで潰しにいく。

違和感しかないと言われても…。

△5三銀と手順に動けた後手が気分は良く▲2四歩と動いたけれど、これもどうですか?

この局面は2筋を攻める将棋では無い気がします(戦力無いし)。

▲6八玉△3三桂▲7九玉△4四歩なら▲同歩△同銀▲6五歩が一応間に合う形。

▲2九飛に△2三歩と控えてくれたので落ち着いたのですが△2一飛とされてたら▲2五歩?辛くて打てないですよね。以下△4一飛で何をしているのか分からない先手陣となります。

この数手辺りで後手がハッキリ良くなっていますので、そう思えれば△1四歩では△4六歩▲2六角△2四歩(次に1四角ですか)や単に△3五歩など、普通に攻めていけば先手陣は崩壊していたかと。

ジワジワと真綿でなんとやらの第2図を迎え、先手はどうするか。

第2図は△4四銀まで

第2図以下の指し手

▲4四同角△同 飛▲4五桂△4一桂▲4二歩△同 飛
▲5一銀△4三飛▲6二銀成△同 玉▲3五歩△4四歩
▲3四歩△4五歩▲3五銀△5五桂▲4四歩△5三飛
▲4三金△3六歩▲5三金△同 桂▲3八金△4六銀
▲4三歩成△4七金▲同 金△同 銀成▲6八玉
(第3図)(手数93手)

豪快な▲4四同角でしたが▲4五歩として△同銀なら▲8四桂△6一玉

▲4五銀△同飛▲5三銀でしたか。以下△3五桂と防がれて…ですが、

▲6二銀成△同玉▲4六金打など、まだ大変だったと思います。

懸命の頑張りで攻め続ける渡慶次さんですが、流石に切れ模様の本譜。

後手に手番が戻ってきての△5五桂は、第一感が△3六歩ですね。

▲同金には△3八銀▲2六飛△4七角▲6八玉△2七銀成で良く。

▲4三金に△同金▲同歩成△同飛で余しながらも有力でしたが、

強く踏み込まれましたね。

△4六銀では直接△4七銀▲同金△3八角でした。

続く△4七金も見るからに重く、不安な攻め方です(△3七歩成は冷静)。

第3図を迎えて、まだ後手が残しているのですが、次の一手が明暗を分けた手となりました。

第3図は▲6八玉まで

第3図以下の指し手

△5八角▲8二飛△7二角▲5三と△同玉▲7二飛成
△同 銀▲4四角△5二玉▲5三金△4一玉▲7九玉
△6七桂成▲3三歩成△6九飛▲8八玉△7八成桂▲9七玉
△7七成桂▲3二と(投了図)

まで113手で渡慶次さんの勝ち

△5七成銀が正着で①▲同玉は△6五桂左右以下の詰みとなり、②▲7九玉は△5六角▲8二飛△7二金▲8一飛成△6五桂右▲5三と△同玉▲5一竜△5二銀以下で後手が残していたという結論なのですが、これを30秒将棋でというのは代表戦クラスですね。

前譜の△5五桂から計三枚を投入して寄せにいったのが、危険だったという話。

ただ、この後の渡慶次さんの指し回しが鬼のようだと言って良いぐらい緩急自在で、序中盤がウソのような手順(褒めてます。ベタ褒めです。)。

自玉の深さをよく知った指し回しで▲7二飛成は強いですね。

水を差すようですが△4一玉では△5一玉でしたか。

以下の話は、先手陣が△6九飛以下の詰めろなので▲7九玉ですが△6七桂成▲3三歩成△6九飛▲8八玉△2九飛成▲3二と△8九竜▲9七玉以下、詰まず勝ち。

この先手陣の9七玉、斜め駒が無いとホントに深いですね。

この順も指しこなされそうな印象です。

玉城さん、非常に惜しい、悔しい将棋です。寄せ周辺だけ失敗といっても良い内容でした。

大激戦の投了図、渡慶次さんの終盤力が際立って輝いた一局でした。

投了図は▲3二とまで

(島本亮)